野歩きノート

野歩きノート

風に吹かれた答えを探して

セミの余命はどのくらい?

朝から雨が降ったりやんだりした日のことでした。

朝の通勤時、道端の水たまりにひっくり返っているアブラゼミを見つけました。

脚が開いていたのでまだ生きているかと思い、そっと傘を差し出すと、傘にしがみついてきます。「よし、もうちょっと生きろ」と傘につかまらせたまま運びました。

途中よさそうな場所もなくて、職場にある植え込みのところまで運び、ハクモクレンの幹にとまらせると、しっかりと木にしがみついたので、そこで一旦お別れ。

昼頃に見ると、まだ同じ位置にとまっていました。

よく見るとセミの目は赤く、片方の翅の先は欠けてギザギザ。もう長くは生きなさそうな姿です。

雨がやんで空気が少し乾いたせいか、アリが木の幹を行き来しています。アリに運ばれるのを嫌ってなのか、セミは時折宙を掻くように脚を動かしていました。

夕方からまた雨になり、退勤時に見に行くと、薄暗い中でセミが同じ場所にとまっているのが見えました。

翌朝出勤すると、セミの姿が消えていました。

ハクモクレンの根元あたりに落ちていないかと、周辺の植え込みを探してみましたが、見つけられません。

飛び去ったか、アリに運ばれたのか。

まあ、コンクリの水たまりにひっくり返って死ぬよりは、よかったんじゃないか。なんとなく。

自己満足でしかないけれど、そんなふうに納得して、探すのをやめたのでした。

 

それから8日後のこと。

ハクモクレンの近くを通りかかった私の足元に、植え込みの中からジジジジジ!と大声で鳴きながらアブラゼミが転がり出てきたのです。

見ると、片方の翅の同じような場所が欠けている、赤い目のアブラゼミ

いや、まさか。

写真を撮っていなかったので、間違いないとは言えないんですけども。

足元に飛び出してきたセミは、地面に這いつくばってじっとしています。片方の翅をたたまず体を支えるのに使っているようで、いびつな格好。

あんた、あの時のセミなの?

8日も経ってるし。8日間も、この植え込みの中にいた訳だろうか?

しゃがんでしばらく眺めていましたが、動かないので指でつつくと、ブーンと元気に飛んで行ってしまいました。

また別の弱ったセミだったのかもしれないし、8日間生き延びたあいつだったのかもしれない。

セミの寿命は羽化してから約1週間といいますが、中にはもう少し生き延びる個体もいるのかもしれません。

ともあれ、植え込みから飛び出してきたセミの「ジジジジジ!」が、私には「あの時助けていただいたセミです!」に聞こえてしまって、思い出してはくすくす笑っています。

※写真は別の日に助けた別のセミファイナル